リユースびんの豆知識

コラム

日本の『リターナブル』のはじまり②

日本でガラスを用いたリターナブルびんが利用されるようになったのは明治に入ってからでした。西洋文化の浸透と共に、ビールびん、牛乳びん、ラムネびんなどが作られはじめます。
当時、ガラスびんは陶器の徳利と比べると、密閉性の高さに加えて透明で中身が確認できる便利な容器でした。


日本でのガラスびんの製造は、始めはひとつひとつ手作業でびんを吹き作られていましたが、工場での大量生産の技術がもたらされたことで、一般に広く普及しはじめます。そして明治30年代に入ると、細口で肩のなだらかな日本酒の瓶=現在でも馴染み深い一升瓶が流通し始めます。
これは通い徳利のように酒販店で詰め替えをするわけではありませんでしたが、使用後の空びんは回収、洗浄され、再使用される、リターナブルびんでした。


皆さんもご存知の通り、一升瓶は今でも日本酒の容器として一般的に使われています。酒販店に訪れると、所狭しとさまざまな種類の一升瓶が並んでいるのを目にすることができます。
これらはリターナブルびんのため、びんの外観には違いはありませんが、それぞれ凝ったデザインのラベルが貼られ、消費者の目を楽しませてくれます。


そんな一升瓶と同じように普及したリターナブルびんに、ビールびんがあります。
ビールは揮発しやすい炭酸ガスを含むため、1.8Lの大きな一升瓶が使われることはなく、日本でビール製造が始まってしばらくは、さまざまな容量の瓶が使われていました。
しかし明治34年に麦酒税法が施行されると、内容量を各社統一化される流れが生まれ、昭和に入るとついに、今でもよく見る633mlの大びんが生まれました。


一升瓶とビールびんは、昭和中期にはごく一般的なリターナブルびんとして庶民の生活に溶け込んでいました。
業販用酒類の黄色いボトルコンテナは今でも街中でよく目にします。
これらは酒屋から飲食店へ、そして使用後は酒屋が回収し、びんの洗浄業者に渡り、綺麗に洗われたあと、再び酒類製造会社の工場で瓶詰めされ再利用されているのです。


しかしそんなお酒のリターナブルびんも、近年では回収率、再利用率が下がりつつあるようです。
一升瓶は、今もそのほとんどが業務用卸・小売店経由で回収されていますが、一般家庭で消費された一升瓶は、回収ルートに乗ることがなく、資源ごみとして処理をされてしまうケースが増えています。
その原因のひとつとして街中の酒屋の減少が指摘されています。現在はコンビニやスーパーが一般消費者向けの酒類販売の中心になっていますが、それらではほとんどリターナブルびんが回収されていないのです。
また、缶容器やペットボトルに入った酒類が家庭内消費の中心になり、リターナブルびんの使用率も減少しています。


昭和の風景の1つとして、酒屋さんが個人宅に配達や御用聞きに訪れ、空びんのケースを回収して帰る、そんなシーンを思い出せる方も多いのではないでしょうか?
配達とリターナブルびんには密接な関係があり、実はそこには無理のないエコロジーな仕組みが成り立っていたのです。


さて、ここまで酒類のリターナブルびんについて説明をしましたが、私たちの身の回りには他にどのような再使用可能な容器があるでしょうか。
次回は「リユース」に注目してみたいと思います。


日本の『リターナブル』のはじまり①の記事はこちらをご覧ください。

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