リユースびんの豆知識

コラム

洗びん事業者 田中商店の歩み

少し面倒な暮らしを受け入れる世の中にしていかなければならない。
そう繰り返し語るのは熊本県水俣市に洗びん工場を構える田中商店の田中利和社長。


田中商店は1946年に個人総合びん回収業として創業しました。
その後、新古びん販売、牛乳パックの回収、古紙再生品の販売事業などを手掛け、2001年にはみなまたエコタウン事業の中核を担うリユースびん・リサイクル事業を始め、2003年には、独自の焼酎用900ml Rびんの規格を開発しそのリユース事業を始めました。
こうしたリユース、リサイクル事業を田中社長は静脈産業だと仰います。


九州と酒びん事情


九州には南九州エリアだけで240社以上の清酒・焼酎メーカーがあるそうです。
その多くは中小規模のメーカーで、少量生産には、大掛かりな設備のいらないガラスびんが最適で、ほとんどのメーカーで利用されてきました。


本来はこうしたリユース事業は地産地消で、その地域でびんが循環するのが理想的ですが、
現在は空きびんを回収する酒販店が減り、地域での回収だけでは数がまとまらず、遠方の関東から仕入れることも多いそうです。


酒びんの消費地としては東京が一番大きく、こうした供給元と消費地の乖離が効率的なリユース事業の課題になっているといいます。


そんな酒びんの需要も、特にこの数年はコロナの影響により、飲食店での消費が減り、業務用の販売は60%以上落ち込混んだ時期もあるそうです。
当然、洗びん事業も影響を受け、コロナ前と比べると洗びんの稼働率は現在も2割ほど落ちているといいます。
またそれ以前から若者の低アルコール嗜好や、今までの消費者の高齢化が進んでいることで、清酒・焼酎の需要は年々減少しているといいます。


一方、業務用販売が中心の酒びんと違い、家庭消費が中心となるRびんは少しずつですが需要が伸びているそうです。


酒びんを歴史で見ると、昭和の時代には酒屋が空きびんを回収し、デポジットとしてびん代を返却していました。
しかし販売規制が実質的に緩和されて以降、酒類の販売は、スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニが台頭し、手間のかかるデポジット式の酒びんは取り扱われなくなってきました。


現在でも製びんメーカーの主力商品は酒びんの割合が大きく、このまま減少を続けると経営が立ち行かなくなるのではと、田中社長は危惧しています。
実際にすでに多くの製びんメーカーでは生産設備を縮小し、オーダーから納品までに数ヶ月要する、といった事態も発生しているそうです。


Rびんを始めとした新しいリユースびんも、回収率だけに目を向けるのではなく、びん業界全体を見て問題を考えることも必要だと、田中社長は仰います。


田中商店の洗びん事業


田中商店では集荷してきたびんは種類ごとにまとめられ、スケジュールに合わせて洗浄作業を行います。
まず最初に手作業でびんの選別、異物の除去を行います。
びんに巻かれたビニールのシュリンクや樹脂キャップは機械で処理ができないため、手作業で取り除かれます。
また、油が入っていたりや内容物に油分の多いびんは洗浄液の能力を落としてしまうため、洗浄には回されずに破びんされ、リサイクル原料にされます。


洗浄工程は全体で30分ほどかかり、最初に5分ほどかけて予備洗浄が行われ、ラベルや汚れを剥がしやすくします。本洗浄では78度の洗浄液で20分ほどかけて入念に汚れとラベルが落とされます。
田中商店では創業当初は、剥がしたラベルは焼却処分をしていたそうですが、現在はRびんのラベルは洗浄後に分離され、乾燥させて100%リサイクル原料にしているそうです。
ただしこれはラベルの規格も統一されたRびんだからできることで、樹脂フィルムなどを使っているリユースびんではできないそうです。


本洗浄が終わったびんは40度の濯ぎ工程でゆっくり温度が下げられ、綺麗にされます。
洗浄機から出てきたびんは検査工程に回されますが、田中商店では全て担当スタッフが目視検査をしています。
検査工程では最初にラベル残りを確認し、剥がれていないものはすぐに再洗浄に回されます。
目視検査は、底部、胴、肩口などに分けて担当スタッフが確認していきます。
スタッフは15分ごとのシフトでローテーションを組み、見逃しのないよう確実な検査をおこなっています。
最後は口部を検査し問題がなければ梱包、箱詰めされます。


この口部は生産者の充填や、輸送時の液漏れに繋がる重要な箇所なので、特に厳しい検査が行われます。
樹脂キャップを採用したリユースびんには口部、特に内側に傷がついているものがあり、これらは金属などで無理にキャップを剥がした痕であることが少なくないそうです。
家庭でキャップを外す際は、せっかくの皆さんの気持ちが無駄にならないよう、無理に剥がさず、手で取れない場合はそのまま返却して欲しいとのことです。


後編では、田中商店のリユース・リサイクル事業の取り組みをご紹介いたします。


▼ Data
会社名:株式会社田中商店
住所:熊本市南区良町5丁目22-26
電話番号:096-378-0310
主な事業:新びん・古びん・洗浄びん販売、ガラスカレット景観舗装、ガラス工芸品販売、紙パックリサイクル、古紙リサイクル
URL:http://www.ecbtanaka.com/

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