『これからの時代のリユースびんは、商業的価値以上に、社会的価値を持たせることが大切です。』とリサイクル洗びんセンターの小笠原部長は仰います。
社会福祉法人きょうされんによって運営されるリサイクル洗びんセンターの歴史は東都生協と共にあります。
元々はきょうされんの作業所で作られていた商品を東都生協で取り扱っていたことから交流が生まれ、びんリユースと社会福祉を両立した事業構想が生まれたそうです。
そして1994年4月に東都生協の協力のもと、東都生協の配送センターに併設された現在の敷地で洗びん事業がスタートしました。
開設当初の東都生協ときょうされんは、苦楽を共にするまさに二人三脚の仕事だったといいます。
それもそのはず、生協で取り扱っているリユースびんの洗びん事業だけで大きな需要がなく、なおかつ福祉事業も進めなければなりません。小さな事業から始まり、成長と共に存続が危ぶまれる苦難を何度も助け合いながら乗り越えてきたそうです。
しかし生協のリユースびんだけでは利用者の工賃を支払うことができませんでした。そのためこれまで蓄積した経験を活かし、1998年に清酒びん(一升瓶、四号瓶)の洗浄作業を始めたことで、事業規模は大きくなり安定し始めました。
現在はコロナ禍で需要は少し落ちていますが、それでも年間380万本ほどの洗びんを行っており、このうち2/3ほどが清酒びんで、残りがRびんという内訳になっています。
洗びんセンターではフォークリフトや配送トラックの運転など危険を伴う業務などは職員が担当しますが、現場での作業は障害のある利用者が中心です。それぞれの利用者が得意な仕事を見つけ、いきいきと働ける環境を用意するのも、私たちの仕事です、と小笠原部長は仰います。
労働環境についても改善を続けてきました。開設当初は利用者の集中力を保つために、正午には洗びんラインを止めてまとめて休憩時間を作っていたそうですが、現在は作業の効率化と更なる生産性の向上のために、スライド勤務体制にし、常に工場を稼働できるように工夫しています。
また利用者の持つ障害特性や個性が違うため、それぞれの集中力や得手不得手を加味し、得意な仕事に合わせて、仕事量や時間もコントロールしています。
これにより、できるだけ利用者がそれぞれの力を発揮し、作業能力を磨いてもらい、仕事のやりがいや暮らしに生きがいを持ってもらうことを心がけています。
今後の社会とリユースびん
最後に小笠原部長にリユースびんについての想いを語っていただきました。
清酒びんはもともと商業利益から始まったリユース事業です。
びんを売り買いすることで利益が出る、つまり金銭的インセンティブを基盤に、びん商、リユース事業が発展してきました。
そのため、代替容器やシステムによりその価値が薄まってきた現在は、たとえば高級感など、ガラスびんの意匠性などが商品価値の中心になっています。
ただそれも新素材の開発などで、どうなっていくかは予測ができません。
例えば、現在私たちはリユースカップの取り組みも初めています。
リユースカップは原料こそ樹脂ですが、新びんに比べると製造に関わる環境負荷、エネルギーは低く、L C A(ライフサイクルアセスメント:製品のライフサイクル全体での環境、社会、経済への影響)の観点では優秀なリユース商品として捉えられる場合もあります。
当然、使い捨ての食器より遥かに環境にはやさしい物です。
時にはこうした選択肢も環境負荷低減のために選ぶ必要があるかもしれません。
一方、Rびんは最初から社会的価値を考えて始まったリユース事業で、昔ながらのリユースびんとは似て非なる新しい取り組みです。
Rびん事業が始まった90年代はまだ、SDGsやカーボンニュートラルといった考え方は一般認知されていませんでした。
みらいにつながる活動
いまRびんが社会に貢献できているのは、こうした先見の明が当時の生協にすでにあったためです。考えてみるとこれはとても凄いことです。
ですから皆さんも、Rびんを一本使うことで環境負荷が減り、社会福祉にも繋がっていることに誇りを持っていただければと思います。
そしてこれからも私たちと皆さんで、まだリユースの意味や価値を知らない多くの人に、その重要性を広めていけたら嬉しいです。
生協は環境のため、社会のために行動に移せる組合組織です。
私たちも皆さんから頂いたびんをみんなで綺麗に洗浄して、これからも応援させていだだきます。
リサイクル洗びんセンターのあゆみの記事はこちらからご覧ください。
▼ Data
事業名:社会福祉法人きょうされん リサイクル洗びんセンター
住所:〒196-0021 東京都昭島市武蔵野3-2-19
電話番号:042-542-5800
URL:http://www.kyosaren.jp/publics/index/27/