リユースびんの豆知識

コラム

田中商店の取り組みと静脈産業

熊本県水俣市では2001年に環境省の推進するエコタウン事業のモデルとして、みなまたエコタウン事業が立ち上がりました。
エコタウン事業は、ある産業から出るすべての廃棄物を新たに他の分野の原料として活用し、あらゆる廃棄物をゼロにすることを目指す構想=ゼロ・エミッション構想を進めるために創設した制度です。
田中商店はその中核を担うびんのリユース・リサイクル企業として参画しています。


その事業の中で、2003年より環境省の支援のもと、生協の利用するRびんとは別に、地域に特化した容量900mlの茶色Rびんのリユース事業を始めました。
2022年現在では鹿児島、熊本のメーカーを中心とした8社、15銘柄の酒類、調味料に利用されています。こうした地域に合わせたリユースのシステムはこれからの社会にとても重要なことだと田中社長は仰います。


より環境負荷の少ない未来に向かうために


田中商店では環境対策にも積極的に取り組んでいます。
洗びん工場では大量の水を使いますが、工場地は埋め立て地にあり、地下水の利用ができません。そのために水道水を利用し洗びんを行っていますが、現在、この洗浄水をできるだけ濾過し、再び洗浄水として利用する取り組みを進めています。
具体的には、苛性ソーダの混じったp Hの高い排水をフィルター、滅菌、R O膜を使い浄化することで再使用可能な水に戻し、かけ流して使用した場合の水量の80%の削減を目標に改良を続けています。
環境対策はそれだけではなく、エネルギーの節約にも注力しています。
洗びんは汚れを落とすために温水を使う必要があり、そのためのボイラーに多くのエネルギーを使います。

田中商店ではこの温水を、夜間電力を使い予め温めて貯水タンクに溜めておくことで、日中に少ないエネルギーでボイラーを稼働できるシステムを構築しています。


またこうした取り組みを社会に知ってもらうべく、積極的に工場見学を受け入れています。小学校〜大学など教育機関の見学ツアーはもちろん、環境関連企業や80カ国を超えるJICA(国際協力機構)の視察に至るまで、年間2000人ほどの見学対応をしています。
生協のグリーンコープが行う見学ツアーも2000年から毎年続けています。


そのほかにも啓蒙活動として、ガラス工芸事業も展開しています。
リサイクルガラスを使った工芸、お土産を作り、現在は200種類以上の商品を展開しています。地域の貢献としてはガラス原料を使って商店街の歩道工事も行いました。


これからの洗びん事業の役割


洗びん事業は静脈産業だと田中社長は仰います。
人の体を巡った血液が静脈で心臓に戻るように、リユースやリサイクルといった事業もまた、経済を巡って排出されたのちにまた経済活動に戻される、そうした静脈のような仕事なのだそうです。


「現在の日本は成熟社会と言われています。今までは人口が増え、物も消費することで経済が大きく成長してきましたが、人口の減少と高齢化が進み続ける現在の成熟社会では、物やお金が循環する経済を目指す方が良いと考えています。
そしてこの循環経済を目指すためには静脈産業が重要な立場にあり、私たちも身近なリユースやリサイクルから国のあり方や未来のことを考える必要があるのではないでしょうか。


環境負荷や環境破壊は、最終的に資源の奪い合い、争いに繋がります。
こうした未来に至らないために負荷を減らし、環境を守っていくには、私たち一人ひとりが今より少しだけ面倒な暮らしを受け入れなければなりません。


さらに本当に環境のことを考えるならば、リユースの前にリデュースやリフューズを考えなければいけません。私たちが今まで何をしてきて、今何をして、将来何をすべきなのか、容器の移り変わりや、ごみ問題の偏移、全体の歴史を皆さんにももっと知ってほしい。その上で正しい選択をしてほしいと願っています。」
田中社長はそう熱く語ってくださいました。


最後に〜日本の抱えるごみ問題と、消費者ができること


現在、日本にはごみ焼却施設が1000以上あります。これは他国に比べて圧倒的に多く、2008年のOECD(経済開発協力機構)のデータによれば世界の焼却炉の半分以上は日本にあると言われています。
残念ながらごみ問題において日本は、決して先進国とは言えない状況です。


「利便性を追求し消費し続けてしまうと、未来へ大きなツケを残してしまうことになる。
その点、1990年代から始まった生協のリユースびんの取り組みは、日本の未来を考える上で非常に意義のある活動です。
ですがせっかくリユースの活動に参加するならば、それをきっかけに、今のごみ問題全体をどう変えていかなければならないか、そういった延長線上まで掘り下げて皆さんも考えてみていただけたら嬉しいです。


私は、少し不便だけど、未来のために受け入れる、そんな世界を望んでいます。
ものを大切にしないということは、人を大切にしないことに繋がる。
人の繋がりが希薄になってしまわないために、物を大事にする。


ただし物を作る、消費することを考えることはとても大切です。
成熟社会で私たちは何をして生きていくのか、どんな国になって欲しいのか、一人一人が考えて子どもたちに伝えること、それは自分のライフスタイルを戒めることにも繋がります。


産業革命から300年、ここまで世界がどう変わり、これからどう変えていかなければいけないのか。地球市民の一員として、これからも多くの皆さんと真剣に話し合って、新しい答えを出したい。」


田中社長はそう仰って、最後に、皆さんが何か商品を購入する際は、一度グリーン購入を思い浮かべて欲しいとお伝えくださいました。
「グリーン購入とは、製品やサービスを購入する際に、環境を考慮して、必要性をよく考え、環境への負荷ができるだけ少ないものを選んで購入することです。
リユースの前にリフューズ、リデュースのことも考えることがより環境負荷の少ない暮らしには大切です。繰り返しですが、少し面倒だけど環境のために受け入れる、この気持ちが重要なんです。」


現在において、こうした活動を牽引している団体のひとつは、間違いなく生協であると言えるでしょう。
経済を回して資源も回す、地産地消も進める。
私たちの取り組みがいつか生協の枠も超えて、広く社会に普及する日まで、これからも着実に一歩ずつ歩みを進めていきたいですね。


洗びん事業者 田中商店の歩み 前半はこちらからご覧ください。


▼ Data
会社名:株式会社田中商店
住所:熊本市南区良町5丁目22-26
電話番号:096-378-0310
主な事業:新びん・古びん・洗浄びん販売、ガラスカレット景観舗装、ガラス工芸品販売、紙パックリサイクル、古紙リサイクル
URL:http://www.ecbtanaka.com/

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