リユースびんの豆知識

コラム

吉川商店 〜独立型の洗びん事業 前編


吉川商店の歩みと洗びん事業


洗びんは難しい仕事ではなく、どなたの家庭でもできること。本来はそれが一番のエコなんです。
そう笑って話してくださったのは、京都市に会社を構える洗びん事業者、株式会社吉川商店の吉川康彦社長。


吉川商店は昭和27年に大阪市で創業し、当初はケチャップを製造していましたが、当時はガラスびんが貴重で入手しづらく、使用済みびんを回収するところから今の洗びん事業が始まりました。
そして昭和35年に現在の京都市に移転し、一升瓶の洗びん事業をスタートさせました。


現在、吉川商店では年間500万本ほどの一升瓶を買取り洗浄して、リユースびんとして再販売しています。
一升瓶は主に清酒用の容器として使用されています。飲食店や家庭で消費された一升瓶は、地元の小売酒販店、卸酒販店、量販店などが引き取り、回収事業者などの手で集められて洗びん工場に持ち込まれます。


空びんは京都、滋賀、大阪などから持ち込まれることが多く、中には東京から届くものもあります。
逆にリユースびんの販売は、酒造メーカーが集まる関西や北陸、九州が中心だそうです。


東京は飲食店が多く、空びんの一大発生地でもありますが、物流コストを考えると、発生地近くで洗びんするのが、環境負荷の面でも理想的だと吉川社長は仰います。


吉川商店の洗びん作業



では吉川商店では実際にどのように洗びんをしているのでしょうか。
まず洗びん工場に持ち込まれた一升瓶は種類(色)ごとに、軽量で頑丈なプラスチック製通い箱(通称:P箱)に入れられて保管されます。一升瓶のメインは茶色のびんで、全体の7割ほどがこの種類になるそうです。


洗びんは、注文に応じてスケジュールが組まれ、洗浄されます。
洗浄ラインは大きく2つ、洗びんラインと、P箱の洗浄ラインがあります。
一升瓶は販売時もP箱を使うため、洗びん工場で綺麗に洗浄され、再使用されています。


洗びんラインでは、最初にびんの口についた王冠が外されます。
次に洗浄工程に入りますが、ガラスびんは温度変化に弱いため、季節や気温に応じて洗浄温度を調整し、慎重に温度を上げて行われます。
洗びん機では1.8~2%ほどの苛性ソーダ水の洗浄液を使って、最大80度ほどに温度を上げて、トータル30分ほどの工程で洗浄します。
洗浄を終えたびんは、きれいに濯がれた後、最後の検査工程に送られます。


検査工程ではまず機械選別で、大きな欠けや傷、ラベルが残っているびんを取り除きます。
欠けや傷のあるびんは破びんされリサイクル原料に、ラベルが剥がれなかったびんは再洗浄されます。
次に機械で判別できなかった不良品を目視検査で取り除きます。一升瓶は大きいため、胴、肩、底部など、部位ごとに担当スタッフが付き、光に当てて一本ずつ検査しています。
工場に持ち込まれた一升瓶のうちおよそ1割程度が不良品として破びんされるそうです。
こうして良品として検査を終えた一升瓶は再び洗浄済みのP箱に入れられて、全国各地の酒造メーカーに販売されます。


洗びんとラベル剥がし


一升瓶は100年以上の歴史を持ち、昔からリユースを前提に剥がしやすいラベルが用いられてきました。しかし近年は日本酒ブームの影響で、剥がしにくいラベルが少しずつ増えているそうです。
これは酒造メーカーが少量多品種で商品展開するケースが増えたためです。
大量生産される清酒のラベルであれば、専用の大型ラベラーを使い粘着力のない紙ラベルに後からのりをつけて、びんに貼り付けていくのですが、少量生産の場合はシールタイプの粘着ラベルを手作業で貼ることが多く、大型ラベラーのように粘着力のコントロールが難しいという問題を抱えていいます。
また粘着力が弱いラベルは冷蔵庫から出し入れする際に結露で剥がれやすくなるため、見た目の問題で粘着力の強いラベルを使うケースもあるようです。


吉川商店ではそんな現代のニーズにも対応すべく、3年前に洗浄力の高い最新の洗浄機に入れ替えました。
ただ、それでもまだ剥がれにくいラベルがあるのが現状で、どうしても剥がれない場合は、びんに問題がなくても仕方なく破びんとして処理されてしまうそうです。
一升瓶の洗びんは吉川商店をはじめとした専門事業者だけでなく、全体の2割ほどは地域の酒造メーカーが独自に行っているといいます。剥がしにくいラベルはそうした酒蔵では処理が困難だろうと、吉川社長はとても心配しておられました。


またラベルの問題はびんだけではないそうで、最近ではP箱にも宅配の送り状ラベルが付着しているケースが増えてきていて、びんのラベルと違い、剥がさないことが前提の送り状は強力な粘着力を持たせてあるため、びんのラベルよりさらに洗浄が困難だそうです。


リユースびんの取り組みには、ただびんを洗うだけでなく、ラベル剥がしや、通い箱の再使用など、様々な作業が伴います。リユースびんに関わる人や企業みんなが協力し、より環境負荷の低いリユースサイクルを構築することが望まれます。
次回は生協で取り組んでいるRびんの洗びんについて詳しくご紹介いたします。


吉川商店 〜独立型の洗びん事業 後編の記事はこちらをご覧ください。

▼ Data
会社名:株式会社吉川商店
住所:〒612-8466 京都市伏見区下鳥羽城ノ越町70
電話番号:075-611-3211
主な事業:製品販売(ガラス新壜、ガラス食器、テーブルウエア、プラスチックコンテナー他)、1.8L洗びん販売、倉庫業・不動産賃貸業

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